特約がない限り、これ以外の場合には期間内解約が認められないと解釈できます。
賃貸人からの期間内解約 賃貸人も一定期間をもって予告すれば、期間内でも解約申し入れができる、と定めている賃貸借契約もありますが、賃貸人が貸借人に明け渡しを求めるには、正当事由が必要です。
賃貸人が期間内解約を申し入れても、正当事由のある場合でなければ効力はなく、賃貸借契約は終了しません(注4)0 賃貸人からの期間内解約特約をつけた定期借家でも、賃貸人からの期間内解約には正当事由が必要です。
定期借家契約は期間満了時に更新されないという契約であって、期間内については一般の法理に従うからです。
定期借家契約での期間内解約 今後とも特約があれば賃借人からの期間内解約は可能です。
しかし、期間内解約権の留保が不動産賃貸借契約近代化の阻害要因となっていることを考えれば、期間内解約の留保は避けるべきです。
賃借人の不利益は、他の条件交渉により十分代替できます(注5)。
(注6) 注1 :中小のオフィスビルでは、解約予告期間を3カ月ないし4カ月とする契約もあります。
注2 :特約がない場合について、 6章2項152頁「期間内解約特約のない契約」注3 :借地借家法38条5項注4 : 6章12項174頁「正当事由」注5 :貸借人の立場について、 4章11項132頁「特約条項の多様化」注6 :ただし、反対説はあります(6章2項152頁)賃料改定特約 2年ごとに賃料を5%増額するというように、賃料の改定の仕方を定めておく特約が、賃料改定特約です。
 かつては、 1年間に10%程度の増額特約が旧借家法7条違反として無効とされたこともありましたが注1)、現在では賃料改定特約は原則的に有効で、内容に合理性がないときに例外的に無効とする考え方が一般的です。
 判例でも、土地の賃料を固定資産税の3倍にするという特約について、賃料改定特約は有効であり、 「内容が旧借地法12条の要件を無視する不合理なものであり、この特約を有効とすることが賃借人にとって著しく不利なものと認められる特段の事情がある場合に限って無効となる」 (注2)としています。
 とはいえ、いかなる場合に特約が無効となるかの明確な基準はありません。
最近のサブリース関係の判例では自動改定特約があっても賃料増減額請求ができるという判例もあります(注3)。
普通借家での賃料増額特約は必ずしも安定的とはいえませんでした。
定期借家法の賃料改定特約 定期借家契約では賃料改定特約の有効性が法律の明文により認められました。
賃料改定特約がある場合には賃料増減額請求はできません(注4)。
 期間中改定しないことも賃料改定特約に該当します。
ただし、 「期間中の賃料を〇〇〇円とする」という文言では、改定しない特約とはよめません。
期間中の賃料を固定する趣旨の契約条項として、 「賃料は〇〇〇円とする。
契約期間中は賃料を増減させない。
賃貸人及び貸借人は、借地借家法32条の賃料増減額請求権を行使しない」という明確な条項にする必要があります。
 特約の有効性が明らかになったため、賃貸人の安定的な賃料収入が可能になりました。
定期借家法のうち、賃料改定特約の規定は、証券化を支えるものとして、極めて重要です。
注1 :大阪地裁昭和50年8月13日判決(判例タイムズ332号303頁)  無効とされたのは「1年ごとに1割を超えない範囲で賃貸人が賃料の増額請求   をしたとき、貸借人は意義なく承諾する」旨の特約でした。
注2 :東京地裁平成6年11月28日判決(判例タイムズ886号183頁)注3 :東京高裁平成11年10月27日判決(判例タイムズ1017号278頁)東京地裁平成11   年7月26日判決(判例タイムズ1018号268頁)注4 :借地借家法38条7項更新 定期借家契約は更新することはできません。
契約の更新がないと定められた借家契約が定期借家契約です(注1)。
再契約 再契約はどうでしょうか。
普通、更新とは区別されませんが、法律的には意味が違います。
更新が契約の同一性を保った上で契約期間を延長することであるのに対し、再契約は従来の契約とは別の新たな契約を締結することをいいます。
 定期借家契約の契約満了に際して、再契約することは可能です。
再契約について法律に定めがなく、契約は自由だからです(図44)。
新契約の性格 再契約をすると、新たな契約が普通借家契約とみられてしまうのではないかという問題があります。
新契約のとき事前説明、書面交付など定期借家のための手続を行っていれば普通借家とはみられません。
 ただし、賃借人に対して契約が当然に継続されるという信頼を与えたという特別の事情があれば定期借家ではないと判断されるおそれはあります。
再契約の特約 定期借家契約において賃借人からの意思表示により再契約することができるという特約も有効です。
順調な経営が続いているため賃借を希望する商業系の賃借人などにとって再契約の特約は有意義な特約になると思われます。
 なお、どのような形での再契約をする場合であっても、定期借家契約の手続きを行っておかないと、普通借家になります(注2)。
更新 再契約 注1 :借地借家法38条1項注2 :借地借家法38条3項契約の同一性 定期借家については更新ができないという法律になったことにより、期間満了後に賃借人が使用を継続するためには再契約が必要となります。
しかし、更新ではなく再契約、という法律構成は問題をはらんでいます。
 というのは、再契約と更新では法的な意味が異なるからです。
更新は契約が同一性を保って契約期間の終了日だけが延長されるものであるのに対し、再契約は別の新たな契約をすることとなります。
再契約の問題点は、旧契約と新契約には同一性がないことに起因します(図45)○再契約の問題点@対抗関係 賃借権は引き渡しが対抗要件になりますので、抵当権設定登記よりも先に引き渡しを受けていれば貸借権が抵当権に優先します(注1)。
ところが再契約になると、賃借権の対抗要件は旧契約での引き渡しではなく、新契約の引き渡しのときが基準となります。
従って賃借人が旧契約では対抗できた法的地位を維持できず、再契約では抵当権者が賃借人より優先することが多くなってしまうでしょう。
賃借人が再契約前の抵当権者に再契約を対抗するためには、抵当権の登記前に再契約の賃借権を仮登記しておく方法を検討する必要があります(注2)。
A保証金 再契約をするとき、普通は旧契約の保証金をそのまま預け続けると思われます。
しかし、新契約と旧契約は別の契約ですから、実際の金銭授受はなくとも、法律的にはいったん保証金が返還されて、その後あらたに再び預けられたこととなります。
しかし、旧契約のとき保証金への質権設定や、差押さえがなされていた場合には、このような処理は賃貸人に不利益となる可能性があります。
保証金への質権設定や差し押さえは、賃貸人が貸借人に保証金を返すことを禁止する効果があるからです。
保証金に質権設定や差押さえがある場合には、質権者や差押債権者の承諾なく再契約をすることは賃貸人に危険があります。
B保証人 旧契約と新契約は別の契約ですから、旧契約の債務の保証人は、新契約では保証人にはなりません。
再契約には注意が必要 @の対抗要件は賃借人の利害、 ABの保証金、保証人の問題は賃貸人の利害にかかわる問題です。
再契約は、いずれの当事者にとっても慎重に法的リスクを検討した上で締結をする必要があります。
注1 :借地借家法31条1項注2 :民法605条賃料相場の現状 賃料相場は低迷していますし、今後さらに大規模ビルの大量供給が見込まれることもあって、ビル賃貸は、買い手市場となっています。
そのため定期借家へ移行しづらいという現状があります。
 しかし、賃貸人にとっては、定期借家契約は、長期間の安定した確実な賃料収入を見込める契約で、ビル経営の近代化には欠かせない制度です。
賃料収入の安定化は、今後の証券化の前提でもあります。

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